キャリアJUMPは、あらゆる職業について徹底解説するいわば『職業図鑑』です。この記事で紹介する塾講師・予備校講師は、生徒の受験合格に向けて主に学力面での指導を行う仕事です。この記事では、そんな塾講師・予備校講師のお仕事を紹介いたします。
塾講師/予備校講師の違いは?
塾講師は、比較的小規模な塾で生徒と密接に関わってマンツーマン指導も行うことが多いのに対し、予備校講師は大規模な校舎かつ大学受験を主に扱っており、講義形式の授業を主に行うところに違いがあります。
塾講師は難易度や評価がそれほど厳しくなく報酬は低めなのに対して、予備校講師は高報酬の代わりに求められる質が高く、評価がシビアです。校舎によってさまざまですが、熱量や求められる質に大きな差があるので適性に合わせて向いている方を選択しましょう。
集団指導型と個別指導型によって大きく変わる
塾や予備校の教育スタイルには集団指導型と個別指導型があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。自分の得意な方を事前に選んでおきましょう。
正社員で塾講師/予備校講師の仕事をする場合はこの集団指導型を取る場合が多く、正社員だからこそのハイレベルな指導力で、一度に多くの合格実績を出すことが求められる傾向にあります。
個別指導型では、生徒のペースに寄り添って比較的ゆったりとした指導ができますが、そのゆったりさ故に生徒が自分の想定外のところで躓く場面が多く、理解してもらえるまであらゆる手を尽くして指導を続ける必要があります。
「生徒がどこで躓いていて、どこから理解できていないのか」を把握できないといけないため、生徒目線に立った指導力が必要になります。講師として入社する際には、どちらの指導型が自身に適しているかを事前に決定しておきましょう。
塾講師/予備校講師の仕事内容
ここからは、塾講師と予備校講師の仕事内容を紹介します。
個別指導型では、1人の講師に対して1人~5人程度を担当します。まずはそれぞれの生徒の目標を確認した上で授業で扱う範囲の決定や予習などの準備を行い、授業に臨みます。授業では、個人ワークの時間を長く取ることで一度に複数名を指導することが可能になります。短い授業時間の中で異なる教科を指導する場合が多く、マルチタスク能力が求められます。
集団指導型の場合は、自分で組んだ授業内容に合わせて授業を行い、クラス全体の規模で見て問題なく学習を進めていきます。また、事前に授業を収録することにより全国の生徒が閲覧可能なオンデマンド型のコンテンツを提供することもありますが、行うことはほとんど変わりません。
さらに定期テストや受験が近づくと、テストや受験本番に合わせた特別講習の日程組みや実施も行います。生徒が目標を達成するために、独自の勉強スケジュールや宿題をプラスするなどをして徹底的に生徒に寄り添うのが仕事です。また学生アルバイトとは違って、授業以外に保護者対応や新規の見学者への案内、入塾手続きも仕事です。その他チラシ作りや会計など事務作業も行い、校舎全体を管理する役割があります。
塾講師/予備校講師に求められるスキル
塾講師や予備校講師は、講師の力量によって生徒の成長に直結する非常に責任重大な職業です。そのため講師に求められる主なスキルはたくさんあるため、ここで紹介していきます。
塾講師や予備校講師には、やはり生徒から信頼されるだけの学力が求められます。塾や予備校によりますが、大手の予備校では特に旧帝大以上、早慶以上など一定以上の学歴が求められるケースもあります。
また単に学力があるだけでなく、分からなくて困っている生徒に対して「なんでわからないの?」と聞くのではなく、何に躓いているのかを生徒の目線に立って分析し、不安を取り除ける力が非常に重要です。さらに、面白い授業ができるためのトーク力だけでなく、受験を控えた生徒などに対して激励の言葉をかけたり精神的な支えになれたりする人間力も求められます。生徒が離脱せず最後まで取り組んで結果を勝ち取るためには、多くの人に慕われる人間力があることが求められます。
これらのスキルは全て今持っている必要はなく、特に②以降は入社後に実務経験を積みながら身につけられます。学力に自信が無い方の場合は、授業をきっちりと行える指導力を身につけるために、得意教科の学力だけでも高めておくのがベストでしょう。
塾講師/予備校講師は未経験でもなれる?
結論、塾講師/予備校講師への転職を行う際は、未経験者では簡単ではありません。塾講師/予備校講師の仕事ではハイレベルなスキルが要求されますが、中でも学生アルバイトの中でも塾講師を経験している方は多く、経験者との差別化が難しい点が理由です。
アルバイト・非常勤講師から始めるのがおすすめ
セカンドキャリア以降に塾講師/予備校講師を検討している場合は、アルバイトや非常勤講師から正規雇用を狙うのが着実な道です。まずは未経験者でも採用されやすい非正規の講師として指導実績を増やし、慣れていってから正社員として就職して授業以外のマネジメントにも携われるようにしましょう。
塾講師/予備校講師に活かせる資格
塾講師/予備校講師で指導をするにあたって、特定の資格は必要ありません。ですが、授業の質を高める目的や生徒からの信頼を高める目的で、塾講師/予備校講師に活かせる資格をいくつか紹介します。
資格名 | 対象科目 | 概要 | 難易度 |
---|---|---|---|
中学校教諭免許状 | 中学校の科目全般 | 中学校で教えるための教諭免許で、教育学部などで取得可能。 | 大学卒業レベル |
高等学校教諭免許状 | 高校の科目全般 | 高校で教えるための教諭免許で、専門の教育課程で取得できる。 | 大学卒業レベル |
TOEIC・TOEFLなどの英語資格 | 英語 | 英語のリーディング、リスニング、スピーキング、ライティング能力の4つを測る。 | 700点以上を目指すと難しめ |
日本数学検定・数学教育能力検定 | 数学 | 数学の知識や教育能力を測る検定試験で、高い数学力をアピールできる。 | レベルにより異なる |
実用英語技能検定(英検) | 英語 | 英語の読解や聴解、文法、作文、会話の能力を測る検定試験。 | 準1級から難しい |
漢字検定(漢検) | 国語 | 漢字の読み書きや意味、用法の知識を測る検定試験で、準1~1級なら高い感じの知識をアピールできる。 | 準1級から難しい |
教員免許があれば、特に集団指導型の授業にも対応できることがアピールできるため、取得していれば有利に働くでしょう。また得意教科が1つでもあれば、これらをはじめとする1つの科目に特化した資格で好成績を目指して勉強を進めるのがおすすめです。
塾講師/予備校講師のキャリアパス
塾講師/予備校講師で培ったスキルや経験を活かし、以下のキャリアを歩むことができるでしょう。
まず、専門とする教科での勉強を突き詰めていけば、このような職業への転職が可能となります。生徒に指導を行っていく上で新たな気づきを得たり、自分が本当にやりたかったことに気づけたりする方は多いです。
また、教育現場で実務経験を積むことで教師や教育コンサルタント、教育行政などのキャリアにも直接繋がります。さらに塾や予備校に長年勤めると、塾長やエリアマネージャーなどに昇進していきます。1つの校舎に限らず複数の校舎を監督するなど責任は重くなっていきますが、マネジメントで利益を追求していくことに面白みがあります。
つらい?しんどい?メリットとデメリットを紹介
塾講師の仕事は一見すると生徒への授業が主ですが、先程紹介した通り実際にはその業務範囲は広く、塾や予備校全体のマネジメントを行うのが役割です。
塾講師の正社員は、授業準備や授業後のレポート提出、生徒の質問対応、進路指導など多岐にわたる業務をこなさなければなりません。さらにクレーム対応や新規生徒の確保など、授業以外の時間にも多くの業務があり、目まぐるしい日々を送らなければなりません。休日出勤も少なくなく、模試監督やイベント開催などで忙しくなることもあります。
また、多くの塾では生徒の増加のために営業活動や保護者対応が求められますが、体力的や精神的な負担を感じてしまう方は多いです。特に成績が変動する時期には保護者からのクレームが多く寄せられることがあり、それが塾講師の大きなストレス要因となってしまいます。
生徒が志望校に合格した時の喜びは、講師にとって最大の報酬です。生徒が達成感を得る瞬間を共有できた時は、今までの頑張りが報われる瞬間でもあります。また授業を行っていく内に、生徒からの「わかりやすい」「できた」「楽しい」といったフィードバックを貰えることが必ずあります。そういった積み重ねで仕事を楽しいと感じられるはずです。
講師は生徒との関わりが深く、その成長を間近で見守って支えられるのがこの仕事の特権です。塾講師の仕事は確かに多忙ですが、生徒の成長と成功を間近で見られる喜びとやりがいは、他の職業にはない大きなメリットです。